日本人の神々の住む山への思い
西洋と日本では、山に対する考え方が違うように思います。
ご存知のとおり、あるイギリスの有名な登山家の言葉に「山に登るのは、そこに山があるからだ」とある様に、欧米等では山は登頂し征服するものであるという考え方の方が主流の様に思えます。「山頂にアタックする」という表現に代表されます。
一方、日本では、かつて山伏や修験道の多くの修行者が行を積む場として、苦行として山に入りました。それは、山には神さまがいらっしゃる。山に入ることで神々とつながる、一体になれるという考えがありました。
山は火山の爆発や海底隆起など、地球内部のエネルギーが吹き出して盛り上がったところにあります。
その計り知れない力強さに、また山は生活に欠くことのできない水を生み出す生命の源泉の場所として、そのすばらしい生命力に、日本人は山に神を祀り拝んできました。
そのため、山には生命力を回復させる素晴らしい神の氣が籠もっています。
日本はありがたいことに雨は多い、緑は多い、山が真ん中にあります。
世界でこんなに素晴らしい国はありません。山がなかったら我々は生きていけません。
そのおかげで我々は生かされているということを知ることができたので、昔から日本人は自然を拝み、山を霊山・霊峰として必ず山に神さまを祀ってきました。
日本人が守ってきた鎮守の森
春日大社の葉室さんの書籍によると、山の様に盛り上がったところといえば、人間の顔にある鼻も同じことだそうです。脳が進化したのが原因で突出したのだそうです。
鼻は、臭いをかいだり、呼吸するだけの器官ではなく、人間のシンボルでもあるそうです。顔のど真ん中にできた、いわば顔の中の鎮守の森。
息を吸うにも日常生活では鼻から行うのが普通です。若い人で口がぽか~んと開いている人は、口呼吸をしている可能性があります。
鼻は、体に悪いものが入ってこないように守ってくれます。一方で口は細菌が出入りしやすいところ。
ハワイ島ツアーの時に地元の原住民の方々に教えていただいた「鼻笛」。鼻から出る息はきれいなので鼻で吹くということを教えていただきました。
そして、鎮守の森も、下から神さまのエネルギーが出て、盛り上がったところです。
ここに神さまが宿っています。
山は神さまのシンボル・象徴と言えるのかもしれません。そういうことを日本人の祖先は知っていたのです。
綺麗な水と山に生かされる日本人
人間は、知識と優れた科学技術とで社会を発展させましたが、代わりに周りの自然に無頓着になり、長年に渡り環境破壊を続けています。
日本では古くから、きれいな水は神さまのお恵みだと考え、その水が流れ出てくる山に神さまをお祀りして、山と森と水を大切に守ってきました。そして、綺麗な水を飲んで、生かされていることに感謝の言葉を捧げてきました。。
神さまの山に降った雨は落ち葉をとおって地下に入り、さらに岩の間を抜けることで素晴らしい栄養と、神さまの尊い氣を含んだご神水となって湧き出てきます。これが古い神社から湧き出る水が、体にとって最も良い水である理由だと考えます。
山と良い水。それらなくして、私たちは生きていけません。霊峰・霊山と呼ばれる場所へ山登りで向かう時には、山を大切にし謙虚な気持で入らせていただくことが大切です。いつも、それらのことを心がけて山に行く様にしたいと思います。
~参考文献~
『神道と日本人』『<神道>のこころ』
葉室頼昭著、春秋社より