熊野古道が意味するもの
熊野といえば、どのようなイメージがあるでしょうか。
熊野古道の世界遺産の印象が強いでしょうか。あるいは、年間降水量が多く台風の通り道にある紀伊半島の山奥の交通の不便な場所の聖地という印象でしょうか。
または、熊野本宮大社でも目にするサッカー日本代表のシンボルマークである「ヤタガラス」を思い出す方もいるでしょう。
熊野が他の聖地と異なるのは、高野山と熊野三山(熊野本宮大社)の間を結ぶ古道「小辺路」がある様に、その地域の神道・修験道・仏教(真言密教)という異なる宗教の聖地同士が熊野古道という道で結ばれていて、それぞれに参詣する人々がそこを自由自在に往来できることです。これは、世界中のどこにも存在しない現象です。
異なる宗教が調和的に共存しているということが平和を象徴していることになり、熊野は世界にとっても良いモデルとなる聖地といえます。
熊野古道は2004年に「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成要素としてユネスコの世界文化遺産に登録されました。
熊野はイザナミノミコトの国
熊野といえばスサノオノミコトの国と思うのが一般的ですが、「イザナミノミコト」の国の様にも思えます。
花窟(はなのいわや)神社にはイザナミノミコトが葬られていると言われ、イザナミノミコトがカグヅチを産んで亡くなったと言われる産田神社が比較的近くにあります。そして、熊野本宮大社そして大斉原近くには、産田社と言われるイザナミノミコトの荒御魂が祀られています。
この様に熊野本宮大社の代表的なご祭神はスサノオノミコトですが、実はかつて、同じところにイザナミノミコトが祀られた形跡があるそうです。
女性に優しい聖地・熊野の魅力
富士山や高野山等、その他女人禁制が残っていた信仰の聖地では、女性は不浄であるという理由から立ち入ってはいけない場所とされていました。現代でそのような場所は極一部の地域を残してほとんどなくなりましたが、古来の信仰の聖地では厳しく徹底されていました。
そのようなご時勢の中で、時宗の開祖である一遍上人が熊野本宮大社に籠もっている際に熊野大神から以下のご神託を得たといいます。
「信不信をえらばず、浄不浄を嫌わず、」
これがまさに、熊野をあらわす言葉と言われています。信じようと信じまいと、男だろうが女だろうが関係ない。誰でも来なさいという懐の深い意味です。
かつては「蟻の熊野詣」と言われるぐらい、多くの人たちが、そして多くの女性たちも厳しい道にも関わらず、熊野本宮大社まで目指したのだと思います。
また、こんなお話もあります。
平安時代のこと、和泉式部が熊野詣で訪れ熊野本宮大社にもうすぐ到着という時に女性の月の現象がありました。当時は不浄と言われていたのでこれで参拝できないと思って悲しんだその夜、熊野大権現があらわれて、「参拝に来なさい」とおっしゃった。和泉式部は翌朝、よろこんで熊野本宮大社に参拝したという話。
熊野はイザナミノミコトという国生みの女神が見守る聖地でもあり、女性であってもどんな時でも来なさいとおっしゃる熊野大権現のメッセージに誰でも分け隔てなく受け入れる暖かさが表れています。この様なことを考えると、熊野は女性に優しい信仰の聖地といえるのではないでしょうか。
熊野は再生・蘇りの聖地
田中利典:「熊野本宮には、どんなご利益があるんですか?」
九鬼宮司:「第一には「再生」ですね。自分で新たに働き事を始める時には、しっかりと自分の原点を取り戻すために、熊野を訪れて、前へ向かって突き進む、大きな飛躍をするための起点というか、ひとつの働き事を始める「魂のよみがえり」の要素があると思います。」
(出展)『熊野 神と仏』原書房より 熊野本宮大社の宮司の言葉
スサノオもしかり、小栗判官・照手姫の伝承もあれば、一遍上人もしかり。この場所は再生の場所として成り立っています。熊野という場所で注目されるのが、「よみがえり・再生」の場であるということ。多くの芸能人、政治家が再起をかけて参拝に来るのも熊野です。
また、時代が困窮したときに聖地・熊野が求められる傾向にあると、熊野本宮大社・宮司の九鬼さんはおっしゃっています。かつての天皇たちが、熊野に数多く訪れた時代がありました。それらはたいてい戦乱の時代でもありました。
皆さんの中にも、新しい自分になりたい、新たなことを始めたい、再生して自分の役割を確認したい、発揮したいと思うことはありませんか。また、普段のお仕事や家事などのハードワークで疲れている方、罪・穢れを祓う強い力をもった温泉でゆっくりしたいと思う方はいらっしゃいませんでしょうか。
熊野本宮大社のお膝元・湯の峰温泉は、小栗判官(おぐりはんがん)蘇生の地としての伝承が有名です。毒を盛られ、病が重くなり、多くの人たちの手によって熊野に詣で、熊野権現のご加護と湯の峰の薬効の効き目によって全快したというお話。
湯の峰温泉は、熊野本宮大社の湯垢離(ゆこり)の場として使われていて、元々は熊野本宮大社の敷地でした。禊の場として使われた大切な温泉でした。蘇り・再生の聖地で誓いをし、蘇り・再生の温泉で罪・穢れを祓う。熊野では、そんなことが可能な聖地なのです。
また、熊野には何度でも訪れたい場所が数多くあります。
・熊野本宮大社<熊野の総本山>
・大斎原<熊野本宮大社が元あった重要な聖地>
・熊野速玉大社
・神倉神社<大きなゴトビキ岩のある、熊野の元>
・熊野那智大社<那智の滝>
・大門坂<日本の道百選の1つであり、熊野古道>
・産田神社<カグヅチノミコトを産んだ場所>
・産田社<イザナミノミコトが荒御魂が祀られる>
・花窟(はなのいわや)神社
・玉置神社<十津川村にある玉置山のスピリチュアルスポット>
熊野は新たな道筋へ向けて再出発したい方へお勧めの再生・蘇りの聖地です。