毎年行っている出雲大社・神在祭ツアーの時期、旧暦10月10日の神迎祭の曜日次第で出雲大社への混雑度合いが変わります。神迎祭が週末になる年は混雑度が増しますが、近年大遷宮以降は曜日に関わらずにこの時期の出雲大社は参拝者で溢れかえっている様です。
日本国中の八百万の神々が出雲に集結され縁結びを相談されるという、とても壮大なロマンを感じるお祭りに毎年日本中から参拝者が駆けつけているのです。
ツアーでは日程が許すようであれば、奥出雲へも訪れています。そして、奥出雲をツアーに組み込むことで、出雲神話の主役の一人であるスサノオノミコトのお妃である稲田姫命の出身地と言われる奥出雲で自然とパワーフードを体感して頂くことにしています。
ある年の出雲ツアーでは、曜日の関係で奥出雲を先に訪れて宿泊した翌日に出雲大社の神迎祭のために出雲へ向かうという行程でした。
その奥出雲から出雲大社へ正に向かおうとしたその時に予想しなかったアクシデントに見舞われたのでした。そして、その思いも寄らないアクシデントがあったからこそ気付かされたことがありました。
奥出雲でのアクシデントからの氣付き
奥出雲の産地直売所に立ち寄った後、これから出雲大社へ向かおうとした時にそれは起こりました。
駐車場から貸し切りバスが発車しようとして動き始めたその瞬間、隣に駐車していた軽トラックが急発進したのです。そして、我々のバスとの接触事故が起こってしまいました。誰の目にも周囲を確認せずに急発進した軽トラに非があるのは明らかでした。
やがて警察がやってきて、事故の当事者ということで私たち全員の名前や住所、生年月日まで書くなどして時間を取られてしまいました・・・。
しかし、ツアー参加者の誰かが怪我をしたといったことはなかったですし、バス会社の代替車がたまたまあったのでそれに乗り換えることで最小限の時間ロスで済みました。
「自分に起きる出来事全てに意味がある」ということから考えると、この突発的な事故から読み取らなければならないメッセージがあるはずでした。
ツアーのこれからの行程の中で気を付けなければならないことがある。
特に注意しなくてはいけないのが、これから向かう「神迎神事」でした。多くの人が訪れることもあり、神事が行われる稲佐の浜は多くの人で溢れかえります。そこでは他人と接触することが多い分、トラブルも起こりやすい場所です。今までに見たくないものを何度も見てきました。
それ以前の年に目にした記憶がその時甦ってきました。神迎神事のお祭りが終了すると、ものすごい勢いで多くの人たちが祭場に残された物の奪い合いを始めました。折角の八百万の神々を迎えた直後だというのに・・・。
人は何とも強欲で恐ろしいものだと思いました。「これは私のよ!」と笹や縄など神事の残存物を引っ張り合って叫ぶ人もいますから、本当に情けないかぎりです。
そして、驚くべきことに、ツアー参加者の一人の方がそうした強欲な人から後ろから押されメガネのレンズが飛んでしまったのです。
人に失礼なことをして、神事で置いてあったものを人と取り合った結果、自分が得たとしても、何のいいこともないと思います。
反対に、人を押しのけてまで何かを得ようとした「カルマ」を背負うことになるでしょう。
自分に起きることは、偶然ではない
接触事故の後、出雲大社へ向かうバスの中で皆さんにお話をしました。
「自分に起きる出来事は偶然ではなく、メッセージがあります。接触事故のような場合、人とぶつかることや喧嘩、トラブルになるようなことをするのは注意しましょうという意味かもしれません」
実は、皆さんに伝えているようで、自分自身に言い聞かせていたのかもしれません。
以上のように話したことから、その後のツアーでは余計に気持を引き締めたというご意見もいただきました。
その後の神迎神事は予想以上の人出。道路も混んで、バスもなかなか前に進みません。イライラしっぱなし。出雲の神在祭でこんな経験は初めてでした。
そのため予定を一部変更して臨機応変にツアーを行うことになりましたが、無事に皆さんと一緒にその年は神楽殿での神迎祭と翌日の神在祭を参拝することができました。
これも毎回お世話になる地元案内人の方が早くから様々な情報と指示を出してくださったおかげ。行程通りにツアーをしていれば、さらに混乱の可能性がありました。
この年、ツアーに参加した皆さんが、いろんなことがあったにも関わらず、冷静に対応してくださったことに、心から感謝しています。
人の本当の姿は、トラブルのときに見えるものなのだと思います。
ツアーに初めて参加されたお1人の方にツアーの感想を聞いてみました。
すると、あのバスの接触事故のときに誰も騒がず、怒らずにいるところがすごいと思ったという答えでした。
確かにその時のバスの中にいた皆さんは誰一人として「この事故で神迎祭に間に合わなくなる!」等と大騒ぎをすることなく、接触事故の事後処理を当事者と警察に任せ、坦々と代替のバスが到着するのを待っていました。
一番感情的になっていたのは自分かもしれません。
また、出雲大社の神迎祭はものすごい人混みで、神事の行われる稲佐の浜では神事の良く見える場所に人が詰め掛けて、順番抜かしや割り込みが暗い中で繰り広げられます。
もし、その日の昼間の接触事故をメッセージとして受け留めていなければ、稲佐の浜での人とのトラブルに巻き込まれていたかもしれません。
その様に考えると、偶然に自分が目にしたものには必ず何らかの必然の意味があるのだと言えるのでしょう。
どんな時にも感情ではなく理性で、冷静に対応することが大事だと反省したツアー中の一幕でした。